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なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-後編☆

<タイトルに「☆」がついているものは、企業や団体等で新しく担当になった方やウェブアクセシビリティって何だろう?と興味を持ち始めた方向けに書いています。>

"なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-中編 ☆"からの続きです。今回はPDFファイルをアクセシビリティ対応することの意義です。

情報難民ゼロプロジェクト

総務省の「情報難民ゼロプロジェクト」をご存じだろうか。
これは2020年に向けて訪日外国人の増加、また高齢者の増加に伴い彼らに向けて災害時に必要な情報を確実に届けることを目的とし、平成28年12月に「情報難民ゼロプロジェクト報告」が公表されている。

「情報難民ゼロプロジェクト報告」の公表 プレスリリース 総務省

この、情報難民ゼロプロジェクト アクションプラン 33関連施策*1の中には、「ウェブアクセシビリティの確保」が含まれている。情報難民ゼロに向けて 期待される役割としては次のように書かれている。

公的機関が開設するものを始め、人々にとって重要な情報入手先となっているウェブサイトについて、高齢者・障害者を含む誰もが円滑に利用できる環境づくりに寄与

また、注目すべきは2020年に向けたアクションプランである。これによると、

2017年
国・地方公共団体のウェブアクセシビリティ対応状況を調査し、その結果を公開。
2018年
学校・病院等のウェブアクセシビリティ対応状況を調査し、そ
の結果を公開。
2019年から2020年
公的機関におけるウェブアクセシビリティ対応の徹底及び民間企業等におけるウェブアクセシビリティ対応への支援。

とある。なお2017年の「国及び地方公共団体公式ホームページのJIS規格対応状況調査」*2については、官公庁等該当団体向けに調査結果説明会が開催されたと聞いている。今後も粛々と進められるのは間違いないので、民間企業であっても例えば特に公共性が高いインフラといった事業展開をしている企業ほど、今後ウェブアクセシビリティ対応を促されるであろう。

ウェブページ一式単位の試験範囲からPDFファイルを除外?

Webページの中に盛り込まれたPDFファイルであったり画像に情報が含まれる場合は、やはりウェブアクセシビリティへの配慮は欠かせない。そうでなければ、情報自体がないのと同じ状態になってしまう。

ウェブアクセシビリティの適合試験について、ウェブアクセシビリティ基盤委員会のJIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドラインを確認すると、試験対象を以下選択できるとしている。

・ウェブページ単位での試験
・ウェブページ一式単位での試験
 a) 全てのウェブページを選択する場合
 b) ランダムに選択する場合
 c) ウェブページ一式を代表するウェブページを選択する場合
 d) ウェブページ一式を代表するウェブページとランダムに選択したウェブページとを併せて選択する場合

このうちウェブページ一式単位の試験では範囲を明確にすることができる。PDFファイルをその範囲から除外し試験をすることも可能だ。ただ、これはウェブアクセシビリティを推し進めるうえでできる部分から取り組むという話であり、これが免罪符となるわけではない

2013年7〜8月にウェブアクセシビリティ基盤委員会により「公的機関Web担当者のためのアクセシビリティセミナー」が東京、名古屋、大阪で開催された時にもPDFファイルのアクセシビリティについての質問もいくつか出た。

公的機関Web担当者のためのアクセシビリティセミナー 開催報告(東京会場)

に当時の質疑応答が掲載されている。ここにも

「最終的に目指すべきゴールは、PDFファイルも含め全てのWebコンテンツをアクセシブルにすること、とお考えください。」

と記載されている。

ご自分の団体が運営しているWebサーバにどのくらいのPDFファイルが含まれているか、また毎月どのくらい増えているかWeb担当として把握されていればわかるが、通常、PDFファイルは増えることはあれど減ることはない。
日々増える中で先送りにすればするほど対応が難しくなるのは言わずもがなだ。

ご自分たちが運営するサイトの状況を鑑みて、その中で最善の方法を選択して頂きたい。

古いPDFファイル問題

最後に『なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-前編 ☆』の「PDFファイルが検索結果で表示されることの問題点」の項での古いPDFファイルへの対応について。極論だがPDFファイルをWebコンテンツとして極力活用しないというのも選択肢のひとつである。

防衛省広報課では業務改革として『PDF形式のコンテンツのテキスト形式への移行』を掲げている。防衛省が手順としてどのように進めているかはわからないが、ここまでの対応を一気にするのはかなり厳しいと推察する。予算をとり外注しても相当時間を要するのではないだろうか。今後掲載継続すべきファイルか取捨選択しテキスト形式せねばなるまい。部局管轄まで移行するのは省内の相当な理解と協力が必要ゆえ、ひとまず広報課管轄のPDFファイルから推し進めているか。

数年前のファイルだと原課にもデータが残っていない、あるいは探し出せないということもあるだろう。割り振られたネットワークサーバ容量の枯渇で、システム部門からデータの回避を促されたり、LANの入れ替え時にデータを整理しているうちに遺失するケースもある—本来まずい事なのだけれども、それは別問題なのでここではそれ以上は書かない。
最近ではPDFファイルからWordやPowerPoint、テキストに書き出すことも可能だ。但し注意すべきは情報の欠落や入れ替わりがままある。(つまりスクリーンリーダーでもそこの部分はうまく読み上げられていなかった可能性があるのだが。)

もし防衛省と同じような対応を試みるのであれば、重要度が高いPDFファイルやアクセス解析でよく閲覧されているPDFファイルから手を付けるのも一手かと思う。むろん同時並行として今後新しくWebコンテンツとしてPDFファイルを使用する時は、必ずテキストファイル化するという徹底をしないとイタチごっこである。

またどうしてもPDFファイルで掲示しなければならない場合は、テンプレート化する、またその文末等に必ず組織トップページやサイトマップ、またはその情報がまとめて載っているページへのリンクを記載するといったことで、閲覧者が移動しやすくなる。

PDFファイルのバージョン問題

更に PDFファイルのバージョンがウェブアクセシビリティを阻害しているケースも付け加えておく。

PDFファイルを作成するときは、使用する PDFバージョンを指定する部分がある。バージョンがあがることでセキュリティ脆弱性対応等がされていることはもちろんだが、新しいバージョン程アクセシブルになってきていることはご承知だろうか。
古いPDFファイルは作成時に一番高いバージョンであっても、今となっては‥なのは自明である。また今後どのような脆弱性が見つかるかはわからない。Webサーバー上にリスクの高いファイルを放置せず、見直す或いは排除することを考えよう。

何にせよこれまでのように情報公開の名のもとで何でも漫然と掲載するのではなく、テキスト形式の掲載を軸に本当にPDFファイルで掲載しなくてはならない情報なのか精査したうえで作業にかかるべきと考える。

少なくとも「HTMLファイルを作るのは面倒くさいからPDFファイルでそのまま載せてしまえ」という考え方は乱暴だ。PDFファイルであっても構造化はしなくてはならない。

最後に

日本盲人会連合では2012年に加盟団体会員や情報メール読者を対象に
国のホームページに関するアンケート(リンク先PDF形式)
を実施し、結果を公表している。

ファイルがPDF形式になっていることが多く、そのために音声での閲覧がしにくい

といった類の声があがっていることが見て取れる。

ここまで長く書き記したが、マシンリーダブルではないPDFファイルを掲載したところでそれは単にウェブサイトに載せただけであり、このアンケート結果のように一部のエンドユーザーの耳には届いていないのだということを知ったうえで、「WebコンテンツとしてPDFファイルを使い続けるならば何をしなくてはいけないのか」ということを認識してもらえると嬉しい。

一人でも情報難民が減りますように。

(了)

*1 平成29年7月総務省(参考)情報難民ゼロプロジェクト アクションプラン33関連施策 一覧(PDFファイル)
*2 対象団体別に検出されたページの多い達成基準、指摘事項(上位5件)がPDFファイルで公表されている。

『なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう』は一旦ここで区切りますが、ウェブアクセシビリティに触れる前や触れ始めだと「マシンリーダブル」と「ウェブアクセシビリティ」が繋がらないというかたもおいでではないでしょうか。
スクリーンリーダーの説明も含めて近日書き留めたいと考えているところです。

(ヘッダー写真 撮影地 ニュージーランド クイーンズタウン近郊 ©moya)

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最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。

[謎々]大きくなるほど小さくなるもの
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仕事はウェブアクセシビリティ屋、プライベートではnzでトレランしたくて走っているmoyaです。民間企業勤務後、中央省庁でウェブアクセシビリティ担当。放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究。電子情報通信学会 正員、ウェブアクセシビリティ推進協会 賛助会員
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