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なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-中編☆

<タイトルに「☆」がついているものは、企業や団体等で新しく担当になった方やウェブアクセシビリティって何だろう?と興味を持ち始めた方向けに書いています。>

"なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-前編 ☆"からの続きです。今回は問題があるPDFファイルの原因と解決策です。

国の機関や地方自治体のウェブサイトを見ると、PDFファイルが多用されていることに気がつく。これには前編で書いたような容易さに加えいくつか理由があるのだが、その結果として視覚障がい者が情報を得られない、或いは正しく読み上げられないといった問題点がある。実例としては、東日本大震災や熊本地震等発災時に

避難所等の情報や地図が画像PDF(スキャナーでスキャンしたもの等)のみで掲載され、音声読み上げソフトが使用できず、視覚障害者が避難情報を得られない。

という声が多くあがった。(前編でここまで)

なぜPDFファイルが正しく読み上げられないのか

では、なぜPDFファイルが正しく読み上げられないのか? それにはいくつかの原因が考えられる。例を交え解決方法を含めて記載する。なお下記以外にも、PDFファイルが正しく読み上げられないことがあるが、よくあるケースを記した。

ケース1.配布文書をスキャナーで取り込みPDF形式に保存して、Webコンテンツとして掲載している。

→これは一見文字が表示されているが実は画像として取り込まれている。音声読み上げでは読み取れない。代替テキストを入れたり、改めてテキストで文書公開することで解決できる。画像には適宜代替テキスト(alt)が必要なのは、HTMLファイルと同じ。

ケース2.Microsoft WordやPowerPointといったオフィス系ソフトからPDFファイルに変換したとき、もともとの文書を構造化していなかった。

→オフィス系ソフトの使い方の問題。タイトル、見出しやリスト、テーブル(表)等を正しく使うことで解決できる。なお読み上げることはできるが、内部に文書構造を指定するタグ付きにしたほうが視覚的な構造が音声でも伝わりやすくなる。

ケース3.作成したファイル内に複数のテキストボックスがあり、あとから追加したものを前に差し込んだりしたにも関わらず、最終的に読み上げ順の指定をしていない。

→オフィス系ソフトの使い方の問題。みていると特にパワーポイントでありがち。また、ワードであっても図やグラフにテキストボックスで注記やタイトルを追加した時に発生する。Adobe Acrobat DC Proで順番を指定することで解決できる。

ケース4.PDFファイルの設定で『アクセシビリティのための内容の抽出』を「許可する」にしていなかった。

→PDFファイルのプロパティで確認。
[文書のプロパティ]→[セキュリティタブ]で『文書に関する制限の概要』部分に『アクセシビリティのための内容の抽出』がある。「許可しない」になっていないか。「許可しない」になっていたら「許可する」に設定変更をする。
(下図はプロパティのダイアログ ボックス。セキュリティタブ部分の下半分に『文書に関する制限の概要』がある)

ケース5.Microsoft WordやPowerPointといったオフィス系ソフトで文書を作りPDFファイルにしたところ「スクリーンリーダー (音声読み上げソフト)*1 で何度も同じ文章や単語が繰り返し読み上げられる」と外部から指摘を受けた。

→ 見た目ではそんなことはないので見落としがち。作成時の環境と手順にも依存するため解決難易度も高い。確かめる方法として実際、スクリーンリーダーを使ってみるのがベストだが、ない場合で手っ取り早くできるのは、

テキスト抽出してみる、つまり文書全体を選択しコピーして、メモ帳に貼り付けてみる。

という方法がある。
このケースは過去に何度も経験があり、都度考えられる原因を探った。すると

・オフィス系ソフトで原稿作成時に何度か推敲し、最後に校閲の最終版を「承諾」せずにそのままPDFファイルに変換していた
・オフィス系ソフトの"印刷機能"でPDFファイルに変換した

といったことがあったが、このやり方で確実に発生するわけではないのでやっかいだ。
Adobe社、MS社双方に聞いたがそれぞれのソフトウェアの仕様に依存する部分があり明確な回答は当時得られなかった。

逆にこの問題が発生しないベストの方法はAdobe Acrobatを開いてPDFファイルにする、であった。
WordにAcrobat PDF makerが組み込まれている場合は、そちらで変換してもむろん構わない。とにかく、Wordの印刷機能ではなく、Acrobatの機能でPDFファイルに変換することで解決できた。

PDFファイルの変換方法の確認

ついでに言うと、PDFファイルがどのソフトウェアを使ってPDFファイルに加工されたかを確認するには、先ほどの「文書のプロパティ」で可能だ。
(下図は再度プロパティのダイアログ ボックス。概要タブ部分の中央付近に『アプリケーション』がある。このダイアログの場合は、Microsoft社のWord上で、組み込まれているAcrobatのPDF makerを使用したのが判る。)

なお「なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-前編 ☆」で書いたように、Adobe社はオープンスタンダードにしているため、類似ソフトが多数ある。組織や個々人によってはAdobe社以外の製品を利用されているかと思う。ソフトウェアに依存する部分であるので、ぜひご自分の環境で試して頂きたい。(更に結果を教えて頂けると助かります)

このケースでできることは、組織として手順書をしっかり設け作成するルールを徹底することである。可能であれば通達文書のようなものはテンプレート化してしまうのも手だが、組織が大きくなればなるほど統一したものを使うのが難しい場合もあろう。

最近はCMSで運用管理し、各部署ごとにそこの担当者が更新というケースも多い。担当者の違い=ウェブアクセシビリティ対応状況の違いとならないよう、統一ルールを設け全体を管理する担当者がチェックするといった工夫をしよう。

今回はファイルが正しく読み上げられない原因と解決策を提示した。最後のケース5のボリュームが多くなったのは、外部からの指摘を受けた時に担当者が認識しづらく、解決方法に苦慮することが多いためだ。
最悪のケースだと、自分はちゃんと問題なく表示されているので「問い合わせしてきた人だけが特異なのでは」と考えてしまいがちだ。経験を重ねることである程度解決方法が見えてくるのだが、市販のPDFの解説本などではなかなか取り上げられていないため今回情報共有させて頂いた。

(‥続きは「なぜPDFファイルをアクセシブルにしなくてはいけないのだろう-後編☆」で)

1* 視覚障がい者がパソコンを利用する際に使用しているソフトウェア。音声で読み上げられる。利用率が高いスクリーンリーダーは高知システムのPC-Talkerだがこちらは38,000円(税込み41,040円)と有料である。無料であればWindows 用にNVDA日本語版がある。

ヘッダー写真 ニュージーランド 南島 ワナカ ©moya

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最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。

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仕事はウェブアクセシビリティ屋、プライベートではnzでトレランしたくて走っているmoyaです。民間企業勤務後、中央省庁でウェブアクセシビリティ担当。放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究。電子情報通信学会 正員、ウェブアクセシビリティ推進協会 賛助会員
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